1987年
TVで観た大会など:ブラザーカップ、世界選手権 in バルナ、ワコールカップ
主に活躍した選手:ビアンカ・パノバ (BUL) アドリアナ・ドナフスカ (BUL) エリザベート・コレバ (BUL) マリーナ・ロバチ (URS) タチアナ・ドルチニーナ (URS) アンナ・コチニエバ (URS) ミレーナ・レリン (YUG)
私はこの年からテレビ放送をビデオにとりはじめた。私は当時中学生で、自分の中ではもっとも新体操に夢中になっていた時期でもありました。87年は、ビアンカ・パノバが最高に輝いたシーズンだったといえるだろう。イグナトバ引退後、名実共にブルガリアのトップに成長した。ブラザーではドルチニーナとの争いにも格の違いを見せつけ圧勝した。
地元ブルガリアでの世界選手権では、個人総合、種目別全てに10点満点をマークして完全優勝を成し遂げた。テレビで観たのは種目別のみだったが、あのときのパノバは神がかったように完璧だった。
正確な手具操作、ピボット、計算されつくした動きなど全てを圧倒して他の選手につけいるすきを与えなかった。もう1人のブルガリアのエース格に成長したドナフスカは、パノバとは全く雰囲気の違う選手だが、スピードと高度な手具のテクニックを武器としている。徒手の動きと手具と音楽の一体性を重視する、ブルガリアの真骨頂を体現した選手と言える。逆に元気がなかったソビエト勢。ロバチは妙に化粧が濃かったけど、大人の魅力を持った選手だ。種目別の輪では、得意の足技でパノバと優勝をわけあった。個人的にはこの時のロバチのほうがソウルで優勝したときよりも好きだったな。面白い選手もいた。コチニエバである。とにかく手具操作がうまくて難しい技をいとも簡単にさりげなくやってしまう。音のつかみかたも抜群で、優勝したこん棒は今観ても圧巻。ユニークな人でした。もう一人ソビエトのベテラン、ドルチニーナも天性のバネを生かしたメリハリのある演技で、優勝したリボンが素晴らしかった。
あと忘れてはいけないのが団体の演技。この年から団体の演技には伴奏音楽にオーケストラが認められ、スケールが大きくなった。結果はこれもまたブルガリアが優勝。特に、輪とボールの演技は衝撃的だった。前年のワールドカップと同じ演技だったが、これ以上に素晴らしい演技を観たことは後にも先にもない。総合、種目別ともに満点で40点。団体の実施で満点をとることは至難の技だが、これは納得の演技で一糸乱れぬとは、まさにこういうことをいうのだろう。今観ても、やっぱり凄いなぁと感動させられる。あの最初と最後のポーズが、えもいわれぬ劇的な空間を創りだしている。
この頃の新体操は、選手の個性というものを非常に大切にしていて、ブルガリアやソビエトだけでなく、他の国の選手達もそれぞれ独自の雰囲気を持っており、観ている方としても本当に面白かったな〜と思っています。だからこんなにはまっちゃったんだけれども。日本人選手では、藤野朱美さんが大好きでした。
世界選手権後のワコールカップでは、15歳のブルガリアの新鋭コレバが良かった。動きそのものの美しさを見せるソビエト風の演技で、スタイルがよく日本人好みの愛らしい顔で人気はかなりのものだった。
1988年
TVで観た大会など:ブラザーカップ ソウルオリンピック ワコールカップ
主に活躍した選手:マリーナ・ロバチ (URS) アレクサンドラ・ティモシェンコ (URS) ビアンカ・パノバ (BUL) アドリアナ・ドナフスカ (BUL) マリア・ロレット (ESP) アンドレア・シンコ (HUN) テレサ・フォルガ (POL) エリザベート・コレバ (BUL)
待ちに待ったオリンピックイヤー。私は大いに期待をしていました。ブラザーでは、パノバとドナフスカ(以下ドナ)が仲良く満点優勝。パノバがみせたこん棒は、歴史に残る名演技。ところがソウルでこの演技が彼女にとって鬼門となってしまうとはまさか思いもしなかった…。オリンピックの前に、NHKで「妖精たちのふるさと」というオリンピックを控えたブルガリアのナショナルチーム、特にパノバとネシュカコーチを特集したドキュメンタリーを観た。その中で、パノバはソウルを最後に引退することを表明していた。こん棒のショパンの「別れの曲」は、そんな彼女の新体操への別れと新たな人生の門出にぴったりの演技だった。厳しい練習の中、何度も涙を流していたが、女王といえどなおもここまでやらなければならないのかという驚きと、追われるものの辛さ、難しさを垣間見た。ネシュカコーチは、インタビューでブルガリアの新体操はオリンピックに勝って初めて成功したといえる、と語っていた。この番組を観てしまったら、パノバを応援するなってほうが無理です。ブラザーの再現のように、ソウルではパノバ&ドナの優勝を信じていました。
しかし、ブルガリアは勝てなかった。ロバチに優勝をさらわれてしまった。この時は、やられたなーというか悔しくてたまらなかった。パノバはこん棒の大技で場外の大失敗を犯し、4位に沈んだ。しかし、ブラザーで観た時のあの貫禄はどこへやら、げっそりやせてまるで別人になってしまった。調整に失敗したことは明らかだったが、余裕のロバチと比べると余計に悲愴感があった。ドナは、切れのある演技をみせたものの、予選でこん棒を落として2位。ソビエトの新鋭ティモシェンコもこん棒で失敗し3位。この大会は、予選の得点の半分を持ち越すシステムだったので、上位4人は決勝で全て満点を出したが、順位は変わらなかった。振り返れば、予選のこん棒の演技で勝負の行方は決まってしまったといえる。バルセロナやアトランタでも感じたことだが、オリンピックのときの採点は、何かおかしいなと思うことが多々ある。予選のときのロバチのリボンは、見せ場のバランスで明らかにふらつき体勢が崩れたのに、10点が出た。これはおかしいよなー。確かにロバチは素晴らしかったし、金メダルは相応しいと思うけど、彼女の演技に限らず全体的にみても甘めの採点だったと思う。誤魔化しようのないミスをしたものが敗れたということか。オリンピックの採点に、仕組まれたものを感じるのは私だけ?ネシュカさんもソウルでコーチを引退するはずだったのに、今も健在なのはやっぱりオリンピックで勝つまでは...と考えておられるのでしょうか。ブルガリアの道は厳しい。
ソウル後のワコールでは、大きく成長していたコレバが圧倒的に良かった。パノバ&ドナがオリンピックで疲れ切っていたのをよそに着実に自分の世界を作り上げていた。特にリボンの演技はたまりません。これからの活躍が期待されたが、腰の故障で引退してしまい、私が観た彼女の演技は、ワコールが最後となってしまった。
